ぼんごさんと高校:体調不良(パニック障害)

パニック障害

高校に通い始めて半年くらいか。
ぼんごはよく体調を崩すようになっていた。

吐き気めまい息苦しさ動悸力が入らない、といった症状が急にやってきてはぼんごを襲った。
よく症状が出た場所は電車で、次いで教室で起こった。

これらの症状は、出始めたときからじっとして過ごせていれば長くても1時間くらいで去ってゆくことがほとんどだったから、最初のうちは症状に気づいても何か悪いものでも食べたかとか、たまたま調子が悪かっただけとか、寝不足とか疲労とかが原因なのだろうとざっくり捉えて、そこまで深刻に考えることがなかった。

しかし、こういった発作のような症状は日を増すごとに何度も何度も繰り返し起こるようになっており、通学の途中で起こることが多かったこともあって、次第に、学校を遅刻したり休んだりするような日が増えた。

遅刻すると学校の先生はぼんごを叱った。

電車の中で体調を悪くしたのだと事情を説明するも、学校に行けるほど回復した状態からは発作の時の深刻さは伝わらず、また外見上の特徴もないし、発作を言葉で説明すると、遅刻の言い訳として適当に選ばれがちな仮病の症状と近しいこともあって、ぼんごは学校をさぼっているとみなされるようになっていった。

謎に体調を悪くするのはほかでもない自分自身が経験していること、元気だったら学校にちゃんと来ているというのに、自分の事情が分かってもらえない現実にぼんごは寂しさを覚えた。

腎炎の時もそうだった。周囲の人間は自分を理解してくれず置いて行ってしまう。
まだ腎炎のときは壁を使って、それでも自分の心をどうにか保つことができた。壁の中で言いつけを守るぼんごを大人がちゃんと見ていて、制限を超えないで過ごすぶんにはぼんごは優しくされたし、自分はこういう人生なのだと達観した何かを得てもいた。

しかし高校に入ってから起きているこの不調は、まったく原因がわからず相談できる人もいない。

体調の悪さを先生や友達に説明するも、なぜ調子が悪くなるかの原因を説明できないし、そもそも原因がわからないし、ずっと調子が悪いわけでもないため、落ち着いて話ができるころには相手にしてみたら全然大丈夫そうに見えるけど・・・くらいには回復していることがほとんどで、話をしていても、この体調不良と発作のつらさが、目の前の相手に全く伝わっている気がしなかった。

相手の言葉や表情から、自分の話が信じてもらえていないことがわかり、こういう言動を繰り返せば繰り返すほど、ぼんごの感覚で言えば、ぼんごは学校の先生や友達から、さぼり魔だと思われるようになってしまった。

体調が悪くなるのだと説明しても、どうせさぼりでしょ、と、さぼりたいための口実を体調不良ってことにしてるんでしょ、とぼんごの身体の真相にまったく迫ってこない理解で片づけられることがほとんどで、というかこの形式の理解をしかされたことがなく、ぼんごは仮病を使って学校をさぼっているやつ、というのが高校生になったぼんごに対する学校の人たちの理解の根本に、出来上がる状態になった。

高校2年になるころには、日常的に体調が悪くなっていた。
発作が出ても、ぼんごは周囲にそれをアピールするよりは、自分で不調をなんとかすべく、保健室に行くとか、学校を早退するとか、行かないとか、遊びに付き合わないとかの行動をとり、周囲に迷惑をかけまいと考えた。
見えない敵が襲ってくるののを、ただただひとりで耐えたのだった。

この体調不良の原因はいったい何なのかと、ぼんごは自分一人で病院にも行った。
お腹が痛くなることが多かったので内科に行くも、とくに異常は無いという結果しかわからなかった。親に心配をかけたくない一心(詮索されたくない一心)で、ひとりで病院に行って、ひとりで診察を受けていたらしい。

何度も病院に通ったが、やはり発作の原因はわからずで、ぼんごは悩んだ。
自分の身体によくないことが起こっているんだろうなという、ぼんやりした不安だけが残った。

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