学校をさぼったことがある方ならわかると思う。
学校へ行きたくない理由は様々あれど、さぼったらさぼったで罪悪感もあることを。
早退
ぼんごなりに普通をこなす努力をしてきてはいた。
多少体調が悪くても精神力だけで身体に鞭打って、学校に無理やり登校した日もあった。
行ってみて、乗り切れる日もあるし、そうでない日もあった。
いつ不調がやってくるかわかったら苦労は無いし、いっそのことずっと不調なら判断に迷うことは無いし、中途半端にできたりできなかったりする境界線上をひとりで彷徨うようなやるせなさがあった。
登校した後でひどく体調が悪くなったときはひとりでに早退した。
先生に訴えて家に帰してもらって、家で寝ていることが多かった。
家に帰って、学校の緊張から解き放たれて少し休めば、ぼんごなりの普通には回復できた。
休んでいると学校から電話が来て、担任の先生と体調のことを確認しあい、明日は学校に来られるかどうかといったことを話したりしていた。
お母さんは働きに出ていたからだいたいその電話はぼんご自身が応対していた。
すれ違い
この日もぼんごは早退した。
それで家で休息をとって、腎臓をいたわった。
布団に横になって、なんで私はこんな身体なんだと、うまくいかない日常のひとこまに罪悪感のようなものを覚えながらも、自分の気持ちを包み込んでくれるのはお前だけだよと年代物になっている布をすんすんしながら、寝た。
少し寝たら、珍しくかなり元気になった。
元気になったことで気分もよくなって、この日は午後から少し外に出かけた。
夜になってお母さんから、学校から電話があったということを伝えられた。
普段なら早退した日はぼんごが電話をとるのだが、この日は電話がかかってきたのが遅く、またぼんごも出かけていたのでお母さんが電話を取ったのだった。
電話口で「早退したぼんごさんの調子はどうですか」と聞かれて、お母さんは何と言ったらいいのかわからなかった。ぼんごが早退したこと、体調が悪いこと、いまどこにいるのか、それらすべてわかっていなかった。
だからお母さんは、ぼんごは寝ています、と嘘をついた。
おかげさまで落ち着いたみたいです、みたいな決まりごとのような言葉もあったかもしれない。
先生に嘘をついてしまうなんて、あんたのせいだと怒られた。
体調が悪いならちゃんと寝てなさい、今日はどこに行ってたの、何をしてたの。
お母さんはあんたが何を考えているのかわからない。お母さんを困らせるようなことをしないで!
遊びに出かけてしまったのは軽率なことだった、とぼんごは反省した。
でも体調が悪いのは本当のことだった。
しかし、出かけられるんだから体調悪いのは噓でしょ、あんたはわがままなだけよ、と怒られた。
ぼんごはこの日は出かけるべきではなかった。
お母さんも先生に嘘をつく必要はなかったかも。
体調悪ければ人間だれしも休むでしょう。
そのことをお互いに受け入れればそれだけでよかったのだと思う。
ぼんごはお母さんには体調不良を訴えても無駄と考えていたし、お母さんはぼんごは体調不良ではないと考えていて、お互いに相手を理解する気持ちが離れてしまっていた。
だからこの日も口論は平行線になって、結局、ぼんごはお母さんの考えに従わないということで怒られた。
ここのところはお母さんには何を言ってもわかってもらえないような気がしてきていた。
お母さんの意志を尊重して、ぼんごは黙って怒られた。
聞いてはいたが、耳は閉じたまま。
言いたいことを言ってもお母さんの勢いに押し負けてしまうから、言うだけ無駄と悟っていてもはや反論もせず、それでも不満は心のうちに積み重なっていて、目の前の人間の小言はほとんど聞こえておらず、耳の中に届いてくるのはおもく重なった、鈍くて歪んだ心中の不快な音のほうだった。
コメント