ぼんごさんと高校:アルバイト

ぼんごさんと高校

高校2年ごろのこと。
ぼんごはアルバイトをしていた。

校則がどうだったか忘れた。学校の友達にもしている子もいたし、たぶん大丈夫だったのだろう。

お金を得て、服を買ったりCDを買ったり、普通の学生がするようなことを自分もしてみたかった。

ティッシュ配りをしたり、ファーストフードのレジのバイトをしたり、スーパーのレジをしたりした。
時給は650円から750円といった感じで、ぼんごはそれなりに頑張った。働くことは嫌いではなかった。

おだやかな職場

あるとき家の近所にスーパーが新規オープンすることがあって、そこで新しい働き手を一斉に募集するということがあった。

当時働いていた場所よりこちらの方が時給が100円近く良かったので、開店と同時にバイト先を変えて、ぼんごは自宅近くのこのスーパーで働き始めた。

高校生のぼんごは、ぼんごなりに真面目に仕事をした。

あまりにひどい体調の場合を除き真面目にシフトをこなし、真面目に勤務し、職場の仲間たちとも円満に過ごすことができた。

家から歩いていけるということで電車などの乗り物に乗るプレッシャーがないし、普段の自分を知る人がいないから余計なことを考えないし、職場の空気もいい意味で緩く(悪く言えば適当で)、適度に休憩をとっても事細かく言われる環境ではなかったりして、ぼんごはこの職場に馴染んだ。

学校にいるのとまったく違って、緊張感を覚えなかった。
リラックスできていて、気張らずに仕事をこなすことができた。
この職場にいるあいだ、ぼんごは謎の体調不良を感じることがなかった。発作ももちろんない。
体調に変化がなかったため予期不安もなく、穏やかに過ごすことができていた。

家や病室以外ではめずらしく、素に近いぼんごでいられる場所だった。
嫌なことが起きたらやめちゃえばいいと気楽に考えていられるし、家も近いし、ひどく怒る大人もいないし、すぐに脱出できそうだし、自分の自由がある程度認められていたし、なんとなし、学校と比べて気を楽にしていられる環境だったようだ。

茶髪

働くことで対価を得るという意味で、得るものは確実にあった。

それらの数万円はCDに変わり、本に変わり、服に変わり、ぼんごは自分の自由の幅が広がったことに楽しさを感じた。

バイトに熱中すれば学校生活のストレスを忘れて体調面にいい影響がでるかも、と少し期待したものの、電車や学校での謎の体調不良はそれはそれで無くならず、自分の体調に関する辛い気持ちが無くなるということにはならなかった。

バイトしてお金を稼ぎ、それを自分の好きなことに変える一時的な楽しみを得ているだけで、遊んでいられるその瞬間は楽しさも感じるが、その楽しい時間が過ぎるとむしろ虚無感が大きく、学校が上手くいっていないのに自分は何をしているのだろうと、本来すべきことから逃げて自分は何がしたいのだろうと、ぼんやりと自分の行く末の見通しの悪さを感じたりすることもあった。

バイト先には自分と同じ高校生の女子が何人もいて、次第に仲良くなり、よく話もした。
茶髪で、短いスカートにルーズソックスをはく子どもたちだった。

彼女たちはぼんごの日常よりも自由度の高い空気を吸っていたようで、それまでぼんごが知らなかったことを教えてくれたりもした。

アルバイトを通じて、またそこで出会う人たちを通じて、ぼんごは、自分を取り巻く現実の環境は、自分が考えていた環境だけではない、ということをすこし、勉強したようだった。

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