ぼんごさんの入院生活:ぼんごさんとお風呂

腎炎

ぼんごさんは入院生活中にお風呂に入ったことがない。
2か月から6か月ほどの入院生活を何度となく繰り返してきて、ただの一度もない。

お風呂はいいや

入院が度重なるとお風呂に入る習慣が薄れてゆき、入りたいとも思わないようになっていったらしい。
お風呂に入るのが好きじゃないし、義務感のような気持ちもない。僕は、お風呂はリラックスしたりさっぱりしたりすっきりしたり、気持ちの良いものじゃないかって思うけど、ぼんごさんの入院生活にはお風呂が無い状態だったので、そういった気持ちを味わうことがなく、お風呂って何のために入るのと疑問に思っちゃうくらいで、僕が思うお風呂のイメージはその頃のぼんごさんの中には存在しないものであったようだ。

家に帰ってもお風呂は「そうでもない」ものだった。
湯冷めをして風邪をひくと紫斑病を再発し、腎炎を悪化させる可能性があるので、すこしでも体調が思わしくないときはお風呂に入らずに寝ることが多かった。冬場は特にそういう日が多かった。
たまにはお風呂に入ってみたい、とこぼしたりもしたが、両親に「垢で死ぬことはないから我慢しなさい」と諭されて、結局入らないということもあった。

入院中はほとんどいつも点滴が腕に刺さっていて服を着替えるのも一人では難しく、服を脱いでお風呂に入って身体を洗って・・・と入浴をこなすことを考えるだけでも面倒なことだったらしい。専用に自分用の入浴設備がある状況ならまだしも、何人も一緒に入院している病室のなかで共同のお風呂に行って、決められた時間内にひとしきりの入浴行事をこなすことは、体力的に厳しいことが想像できていたし、ぼんごさんの闘病生活のなかでは現実感のない出来事だった。

垢で死ぬことはない

お風呂に入らないので、髪の毛も当然ずっと洗わない。身体もかゆくなってくる。
お風呂に入らない代わりに毎日、清拭といって、ベッドの上で看護師さんやお母さんに身体を拭き清めてもらった。点滴を外して服を脱いだり着たりして、温かいタオルで全身を拭いてもらった。ぼんごさんの身体にとっては、アレルギー性紫斑病と紫斑病性腎炎の原因となり得る、雑菌などの抗原を身体の中に入れないようにするのは大切なことだった。

お風呂に入らないことや髪の毛を洗わないことはまったく苦にならなかったが、体がかゆいことがあるのは少し困った。単純にかゆかったからだ。とくに、股間がかゆくて困ったときは看護師さんがきれいに洗ってくれた。尿によって雑菌が繁殖し尿路感染症から腎炎を併発するようなことがあるとそれは腎盂腎炎といって、紫斑病性腎炎とは別の要因での腎炎となり、ぼんごさんの腎機能がさらに深刻なダメージをうけるのは必至だった。看護師さんはお風呂に入れないぼんごさんの清潔を保つのにかなり気を遣っていたのだろうなと想像する。
あまりにお風呂に入らないので、たまった垢がぽつぽつと皮膚の表面に浮き出して見えることがあった。そろそろお風呂に入りたいな、なんて普通は思いそうなところ、ぼんごさんは「垢で死ぬことはない」という言葉を想って強い気持ちでとぽりぽりとお腹を掻いて、大好きな布を吸ったにちがいない。

ちなみに、いまはお風呂に、30日あれば29日は入っている。ねんのため。
しかしやっぱり好きではないらしい。

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