音楽が嫌いって人はいるのだろうか。
いるらしい。
三島由紀夫がそうだったらしい。
曰く音楽は「触れてくる」ものらしく、僕なりの解釈で言えば、作曲家の精神の影響をこれでもかと浴びせられることで自分の精神にも確実に影響が出るので、これを嫌ったらしい。
確かにそうだと思う。
僕は気分によって想像する音楽が違うし、わざわざ気分に近い音楽を選んだり、逆に音楽によって自分の気分を変えたり、といったことはある。で、それは三島由紀夫とは違って好ましいことだったりする。
また、これまで知らなかった音世界に耳が開いたときの新鮮な感覚は子供の時から変わらない嬉しさを覚えるものだったりもする。
ぼんごが高校の頃は、音楽のこの触れてくる効用に本当に助けられた。
触れてきた音楽の中に何を聞くのか、ここが大切なのだった。
外出するときはディスクマンでずっと何かを聞いていた。
外出は戦いで、その日の朝に自分を鼓舞してくれる音楽をがっつり受け取ると、気分よく1日を始めることができて、頑張れる気になったりした。
家でもよく聞いた。
家では戦わなくていいので、ここは落ち着く場所だよと自分を安心させてくれる曲を選んで静かに聞いたりした。
学校に行くことができなかった日などに、しんみりと聞いた。
今回は、この頃ぼんごがリアルによく聞いていた音楽を、そしてそれらの何がぼんごの精神に触れて来たのかをご紹介。
外で聞く編
Pearl Jam / Vs.
このCDを再生して1曲目「Go」の冒頭から30秒間、曲とは言いづらい何か粗けずりでごりごりの空間が聞こえる。
これから荒事を迎えるぞという瞬間、精神の準備体操のよう。ずっずた、ずっずっずた、というドラムの陶酔感。
そのあとちゃんと4拍リズムがとられ、「でーでーでーでーでーでーでーでー」と全体の音が鳴り、ここで一気に勢いを得て、急に眼が覚めて走り出すような覚醒感がある。かといってめちゃくちゃな勢いに任せた感じは無く、それぞれが自分のペースを保って持ち場を動かしているような清々しい強さが心地よい。
毎日の登校は戦いそのもので、自分Vs.見えない敵の、終わらない戦いに勇気を与えてくれる曲だった。今日という日にお前が強くいたいなら、それをドライブするのは他ならぬお前なのだという意思を受け取ったような気がして、ぼんごのテンションは朝からぐいーんと引っ張りあがって学校へGo!なのであった。
一番好きなのは「Rearviewmirror」。
渇いた音が淡々と連なって次第に集まって盛り上がってゆき、シンプルなリズムとともにじわじわと気持ちを強くしていってくれる。
この曲は、何か嫌な記憶を振り切るように逃げる(のだが車のバックミラーには見えてもいる)という心中の不安を吐露しつつも逃げるという行動にはっきり意志を向けるような歌詞だということをつい最近知って、このころのぼんごの心中―腎炎を忘れ去って逃げるように普通に駆け込んでゆく意思を強く持たないといけない―にぴったりなのかもしれないと何となく思った。
一番盛り上がる次の部分は、
Saw things(中略)
Clearer(中略)
Once you were in my rear-view mirror(中略)
I gathered speed from you fucking with me(中略)
Pearl Jam『Rearviewmirror』より
作曲:Eddie Vedder/Pearl Jam
詞:Eddie Vedder/Pearl Jam
僕訳:
見えた、はっきり見えた。
バックミラーに映るお前が、俺をXXXXするお前が見えたから、俺はスピードを上げる・・・。
まさにバックミラーに映る影を振り切るところで、酒をのんで気分がいいときはエディ・ヴェダーふうに太い声で歌真似をするほどぼんごも僕も聞き込んだ曲だ。
THE MAD CAPSULE MARKETS / 4 PLUGS
強く荒く激しく歪んだ音、だけどリズムは軽快でそこまで速さは無く、重すぎず跳ねていて、荒さの中にとても綺麗にまとまったバランスの良さを感じる。重いが聞きやすい。パンクのようでありメタルのようであり、ヒップホップ風でもありビジュアルぽくもある。
このバランスの良さは曲全体にこのバンド特有のスタイルとなって現れて、没入感につながる。
外出していて、周囲の状況に惑わされず自分の目の前の一筋の道に集中して歩くしかないようなとき、人混みの中でこれを聞いた。町の音、人の声、何も聞きたくないときに、外部の音を遮断して内向きに集中したいときに好んで聴いた。他人のことは良い、自分のことに集中だ。
一番好きなのは「ノーマルライフ」らしい。
ここでいいか ここでいいさ
それでいいか それでいいさ
THE MAD CUPSULE MAEKETS『ノーマルライフ』より
作曲:TAKESHI UEDA
詞:TAKESHI UEDA
普通の人生か・・・。
最初のうち、静かに悩む脳内風景を見ている感じなのだが、曲が進むと「それは自分で見つけるものだろ!」とでも言わんばかり、頭を殴られたような気になる強い音だ。
普通を悩むぼんごにとってはとても勇気が出る曲だった。
The Stone Roses / 石と薔薇
1tアルバムThe Stone Rosesの1曲目には思い出があった。
好きだった人がいて、その人が彼女を連れて歩いているのを見かけたのだという。
そのときにこの1曲目を延々と聞いた。
入りが静かで優しく、いまの自分の寂しい気持ちのように悲しいメロディで、なんだか慰めてくれるような懐の深さを感じる曲だった。並んで歩く姿は距離よりも遠くにあるようで、自分にはたどり着けない世界の出来事のように感じた。
それで、こんな風に思った。
I wanna be adored
The Stone Roses『I Wanna Be Adored』より
作曲:Ian Brown, John Squire
詞:Ian Brown, John Squire
自分もいつか誰かに想われるようになるのだろうか。
このときは体調と関係なく学校をさぼって、一日中これを聞いていたらしい。
途中で盛り上がる部分もあるが、全体に音の広さと大きさと大河のようなゆったりしたリズム感があり、ギターの柔らかさから切なさを想った。
FLYING KIDS / 真夜中の革命
このアルバムの3曲目「ディスカバリー」は一度聴いたらわすれない。
ある時、ぼんごはこの曲を聞きながら人生の大事な一瞬を駆け抜けた。
Ah I ya Ah i ya Ah I ya Ah…
FLYING KIDS『ディスカバリー』より
作曲:FLYING KIDS
詞:浜崎貴司
この時の様子はまた別の機会に書きます。
音楽の話は愛がこもりすぎて長くなるのでお家編は次回にまわします。
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