ぼんごさんと小学校:おしっこ

腎炎

腎炎のぼんごさん、おしっこは我慢せず、尿意を感じたらすぐトイレに行くようにとお医者さんから言われていた。おしっこをためすぎるとおしっこのなかで菌がどんどん増殖して、それが腎臓に侵入して腎盂腎炎を引き起こす可能性があるためだ。

紫斑病性腎炎でさらに腎盂腎炎も発症となると、それはぼんごさんの腎臓をより一層深刻に追い詰めることになってしまう。それだけは意識して避けないといけなかったのだ。だから、ぼんごさんは頻繁にトイレにゆく。今でもそうだ。

すぐトイレに

お医者さんからも家族からもおしっこをためないように厳しく言われて来たため、ぼんごさんのおしっこに関する感覚は敏感で、我慢をするどころか、ちょっとでも尿意を感じたらいつでもすぐにトイレに行くような状態だった。体内の毒をおしっこで出さないと自分の腎臓が悪くなっていってしまうという強迫観念のようなものがあった。あまりにトイレにゆくので膀胱の異常でおしっこをためられないのではと検査をしたこともあったが膀胱の機能のほうは正常で、トイレが近いのは精神的なことだと片づけられた。

学校に行けたときも、授業中でもお医者さんの言いつけを守ってトイレに行った。1時限に1回くらいの頻度でトイレに行っていたので、ぼんごはトイレに行ってばかりいる、とクラスのこどもたちのあいだで噂になったらしい。

その子たちによれば「学校ではトイレは我慢するもの」で、我慢できずに何度もトイレに行ってしまうぼんごは異端児のように思われていたようだ。でも、そんな常識を解さないぼんごさんは毒を出しに何度も何度もおしっこに行った。少ししか出なくても、クラスメイトに好機の目で見られても、ぼんごは教室を出てひとり、トイレで人知れず戦いをつづけた。

お出かけは大変

社会科の見学の時には学校からバスで1、2時間の移動があることがあった。担任から乗車中のトイレはどうしたらいいかと家に連絡が届き、相談のうえ、当日はぼんごさんだけクラスメイトと別にお母さんと一緒に電車で現地まで移動することになった。現地ではクラスメイトと一緒にバスに乗って移動した。このときはお母さんも一緒にバスにのってぼんごさんの様子を見守っていたらしい。もし僕がクラスメイトでそのバスに一緒に乗っていたら、ぼんごには距離を感じていただろうなと正直思う。

見学の途中、いつものようにぼんごさんはおしっこの気配を感じてお母さんにトイレに行きたいと伝えた。お母さんはトイレを探したがすぐに入れるところはなかった。それで近所の駄菓子屋のような商店に入り、トイレを貸してほしいと頼んだのだが、残念なことに断られてしまった。お母さんは苛立った。

仕方がないのでその辺で済ますことになり、ぼんごさんは人気のない草むらにしゃがみこんで用を足した。すこし毒が出た。その量をみて、ちょっとしか出ないじゃないの、とお母さんはぼんごさんを怒った。ちょっとしか出ないおしっこのためにトイレに苦心するなんて煩わしくて無駄な時間だったとでも言いたげだった。

誰のせいでもないやるせない気持ちを、ぼんごさんはぐっと飲みこんだ。
そんなこと言われたってな。おしっこしたかったんだもん。

腎炎の患者にとってトイレは大切なサインだったり日常的な闘病の一場面だったりする。
それは知っておいてあげたい。

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