ぼんごさんの入院生活:おしっこ水増し事件

mizumashi 腎炎

腎臓の容態を確認するため、ぼんごさんはよく尿検査をされた。

普通の健康診断なんかではおしっこ一回分を検査対象とするが、腎炎のときはより正確に腎臓の状態を計るため、畜尿といって尿をためておいて、一日ぶんの尿から腎臓の具合をみるのだ。一回の尿だと成分にばらつきが大きいので正確な検査ができない。そのため一日分をためて平均して検査するやり方で、この畜尿は入院中は毎日行われていた。

畜尿

尿蛋白が出ると腎臓はひどい状態で、ベッドの上で安静にしないとならなくなるため、ぼんごさんは尿の状態が悪いことをいつも恐れていた。また、畜尿は食事療法が正しく行われているかの指標にもなっていた。病院食以外のものを食べたり、病院食を食べていなかったりすると排出物の成分からそれはすぐにわかってしまうのだった。

トイレに甕があって、おしっこはそこにためていた。専用の尿瓶におしっこを出してから、トイレに置いてある畜尿用の甕に移すのだ。トイレまで行けないときは看護師さんが持って行ってくれた。トイレにはほかの腎臓病の患者の甕も並んでいて、みな腎臓の容態を語る動かぬ証拠として明らかにされていた。

腎生検のあとなどはトイレが大変で、寝たまま用を足すように言われた。寝ながらおしっこをするのは身体の構造的に難しかった。膀胱から先へおしっこが流れ落ちないのでお腹にちからをいれて無理やり排出するようにした。

おしっこ水増し

あるときは、ぼんごさんはおしっこの色が茶色になっていて、汚くて、量も少ないことを気にした。何度も入院してきたぼんごさん、これは明らかに腎臓が変容していることを示すものだと気が付いた。いつもの色じゃねえ、と甕を前に驚いた。これでは、検査結果が悪いに違いない。

びびったぼんごさん、検査結果をごまかすため洗面所で水を汲んで甕に流し入れた。甕は、それなりに見覚えのある健康な色になった。ぼんごさんはうしろめたい達成感とともにベッドに戻った。

数日来、ぼんごさんはおしっこを薄めた。

容態が悪いのを知られたくなかったし、早く退院したかった。
しかし、ぼんごさんのおしっこ水増しはすぐにばれた。

ある日看護師さんが来て、おしっこ増やしてるでしょって怒られたのだ。やっちゃだめなことだよと諭された。水増しがばれると思っていなかったので意外だった。不正はわかるものなんだとまたひとつ病院のルールを思い知らされる出来事だった。

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